卒業生の声
卒業生の方々から現在の仕事や数理工学専攻についての声をお寄せいただきま
した。(50音順)
大嶋達也さん
設備技術のエンジニアとして勤務しています.私は圧延設備(鉄の塊を数千トン
の圧力をかけて製品として出荷する厚さまで加工する設備)の建設,改善に携
わっており,制御モデルの構築,既設設備の老朽更新などを行っています.
直接的な関わりはありません.しかし,設備建設の際の制御ロジック構築で直面
する「どのような操作(入力)にも耐えられる設備か」,「ロジックに間違いが
あって設備が破損しないか」などの問題の解決に研究室で学んだアルゴリズム設
計の考え方が役に立っており,小規模で効率的な制御システムの提案という形で
業務に活かされています.
社会人になると理論を体系的に勉強することが少なくなってきます.学生のうち
に,自分はこれは知っている,という武器を身につけてください.さらに学生時
代はよく遊んでください.学生時代の先輩,後輩,友達とのつながりは人生の財
産です.平日の夜が明けるまで飲んで次の日の研究会はみんな二日酔いだった,
という経験はとてもいい思い出です.今でも連絡をとって,業務に活かせる新し
い数理的なアプローチがないか,といった話が気軽にできるのも,そのときの経
験があったからこそだと思っています.
よく学びよく遊んで,実りある学生生活を送って欲しいと思います.
近藤健夫さん
パナソニック株式会社のテレビ事業部で、テレビのソフトウェア開発を行っています。
非常にクリエイティブな仕事で、テレビのユーザインターフェースの仕様設計から内部仕様設計、実装まで幅広く携わっています。
配属されて1年半の間に、日本語入力機能・ファームウェアアップデート機能・テレビだけで遊べるフルポリゴンゲーム・VODサービスなど、などさまざまな機能を開発しました。
研究内容と今の仕事内容は直接関わっていません。
おそらく弊社の大半の社員がそうです。
ただ、大学で数理工学を学ぶことで得られる、論理的思考力やプレゼンテーションスキルなどは、
仕事を進めていく上で必要な能力であり、また強みにもなります。
まだまだ経験が浅く、がむしゃらに仕事をしていますが、非常に充実していて楽しいです。
その分、学生の頃に比べて時間は少なく、仕事のための勉強をしようと思ってもなかなか自由に時間が取れません。
学生の頃によくやっていた、時間を潰すという行為がいかに愚かしい行為かを痛感しています。
何でも良いので、時間は潰すのではなく使うようにしてください。
達見良介さん
大型ストレージシステムに備える新機能の研究および開発を行っています。必要
な機能を実現するにはどのような方法をとればよいかを検討したり、最新の技術
動向を調査して次の発明につながるようなネタがないかをみんなで話し合ったり
しています。また、進めた研究は報告書にまとめたり、特許の執筆を行っています。
直接かかわりがあることはそんなに多くありませんが、例えば、大型のストレー
ジシステムは企業の基幹業務に関わっているために、システムの信頼性が重要視
されます。システムの信頼性を評価するためにデータが失われるまでの期間実際
にシステムを動かし続けて信頼性を測ることは不可能(非現実的)なので、数式モ
デルを立てて評価します。そのモデルを用いて、求められるレベルの信頼性を達
成するような手法を検討しています。
企業の研究所に入ると、いろんな分野の専門家の人たちがいます。自分の知らな
かった知識をたくさん得られる半面、同じ専攻の人はそんなに多くなく、1年目
や2年目で会ってもその分野では先頭を切って研究を進められる人として見られ
ます。周りに専門家がたくさんいる大学院生の期間を有効に使って、自分の得意
分野を伸ばしていってください。
千葉逸人さん
数学と、飲み会の幹事。
数理工学科・情報学研究科で聞くことができた幅広い内容の講義や研究会は、
今、純粋数学をやる上でもとても役に立っています。
研究室や指導教員の色に無理に合わせずに、自分のやりたい研究をやるのが一番いいと思います。
豊川博己さん
金融系のシステムエンジニアとして、日本国内の金融機関様向けに使って頂く
ITシステムの共通中核部分(パッケージ)の設計・開発に携わっています。
また2011年から、修士まで在籍していた研究室の社会人博士課程として、
休日などに研究を行っています。
金融系のシステム設計・製作に深く携わるためには、会計制度の知識や
金融工学の数学的な理解、さらには各種プログラミング言語による
高度な実装力が必要となります。
研究室での研究が仕事で直接必要とされている訳ではありませんが、
数理工学専攻で得た数学および情報学に関する教養は、
現在の業務で意外なほど大いに役立っています。
社会人になると、まとまった時間がなかなか取れません。そのため、
在学中には自分の研究に必要な内容だけでなく幅広い分野の教養を
身につけることをお勧めします。
学生時代に勉強したことは、思わぬところで役立つものです。
また、他の研究室や企業のプロジェクトなどへ参加することで
様々な人と関わり、色々な考えに触れることで、
人間としての幅を広げると良いと思います。
山本大輔さん
システムエンジニアとして、主に工場の生産計画を策定するプログラムの設計・開発業務に携わっています。お客様からの要望を聞き、その要望に答えるプログラムを設計・開発し、評価結果から新たな改善を見出すというサイクルを繰り返しております。
解決すべき問題に対して様々なアプローチを考えるというスタンスは、仕事でも研究でも変わりません。仕事では最適化問題に定式化して問題を解決するということは少ないですが、研究室で培ったヒューリスティックな解法を考える力は大いに役立っています。
大学の研究がそのまま仕事に繋がることは少ないかもしれません。しかし、大学時代に研究に臨む態度は、自然と仕事に対する態度に出てくるかと思います。プライベートの時間と仕事(研究)の時間をうまく切り替え、どちらにも全力を尽くして下さい!
2008年離散数理研究室、修士課程修了
現在の職場: JFEスチール株式会社 西日本製鉄所(倉敷地区) 制御部制御技術室
2009年度物理統計学分野、修士課程修了
現在の職場:パナソニック株式会社
2010年制御システム論分野(大田・鷹羽研)、修士課程修了
現在の職場: 日立製作所 横浜研究所 ストレージシステム研究部
2009年力学系理論分野(岩井研)、博士課程修了
現在の職場: 九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所
2010年数理解析分野(中村・辻本研究室)、修士課程修了
現在の職場: 新日鉄ソリューションズ株式会社
2010年最適化数理分野(福嶋研)、修士課程修了
現在の職場: キヤノンITソリューションズ株式会社 R&Dセンター 数理技術部
Last modified: Thu May 19 11:48:58 JST 2011