卒業生の声
卒業生の方々から現在の仕事や数理工学専攻についての声をお寄せいただきま
した。(50音順)
黒川典俊さん
国家公務員として、主に科学技術政策の企画・立案業務に携わっています。
2010年4月から情報課に配属になり、「国家基幹技術」である次世代スーパー
コンピュータプロジェクトや、情報科学技術分野の研究開発、科学技術情報の
データベース化・オープンアクセス化などの政策課題に、チームで取り組んでいま
す。
ゼミや自らの研究を通じて鍛えられた論理的思考力や、未知の分野に対する
アプローチの手法は、常に新しい政策課題に直面する私にとって大いに役立ってい
ます。
大学院時代は、自分の興味・関心のあることにじっくりと取組み・考え抜ける貴
重な機会ですし、
数理工学専攻にはそれを支えて下さる熱意あふれる先生・ユニークな学生と、充実
した研究室環境が揃っています。
夜遅くまで研究のこと、将来のことなどを研究室のメンバーと語りあい、議論しあ
ったことが大変印象に残っています。
真摯に打ち込めば、自分の武器を磨き、知識・興味を深めるには最高の環境だと思
います。
勉強に遊びにと、すべてに対して全力投球で頑張ってください!
小宮彬さん
グループ内の関係会社を対象にネットワークインフラの整備や
コミュニケーションツールの導入・運用が主な業務です。
直接の関係はほとんどありません。ただ定量的に物事を評価する場合には
統計学の知識が必要ですし、要件定義などは問題を整理して、有効な解決策を
模索するといった研究と同じようなプロセスで行われますので、そこで
研究室での経験を役立てています。
社会人になってからはとても学生時代が懐かしく感じます。失敗することも
ありましたが今ではいい思い出です。在学中は研究だけでなく趣味や仲間と
過ごす時間を大切にしていただけたらと思います。
長沼佑樹さん
ストレージ(企業がデータを保存するために使用する記憶装置)を管理する管理ソフ
トウェアの
研究開発を行っています。
その中でも現在は、管理ソフトウェアのユーザビリティ向上に関する研究開発を行っ
ており、
ユーザによる実験により得られた実験データ等をもとに改善方法などを検討していま
す。
大学時代の研究内容と現在の仕事に直接の関係はありません。
しかし、集まったデータを分析するために統計学、分析から得られた情報を用いて改
善案を考え
出すために最適化の知識、といったように数理工学で広く学んだ数理的手法が役立つ
場面が多々
あります。
また数理工学で学んだことではありませんが、研究としてシミュレーションを行うた
めに勉強し
たプログラミングの知識や、研究室内での情報機器管理の知識なども役に立っていま
す。
大学時代の研究がそのまま仕事に引き継がれるというケースはあまり多くないかもし
れません。
しかし、得られている情報から数理的なアプローチを用いて論理的な結論を導く能力
は、多くの
仕事で必要とされます。そして数理工学専攻では講義や研究を通して、多数の数理的
なアプロー
チを学ぶ機会があります。自分の研究への関係あるなしに関わらず、積極的に知識や
考え方を学
んでおくと、将来役に立つと思います。
また社会人になると、学生のときほど時間が自由に使えなくなることが多いです。皆
さんそれぞ
れが興味を持つ「学生のときにしかできないこと」に対して、一生懸命取り組んでお
くというの
も重要かな、とも思います。
廣瀬亨さん
私は、現在通貨オプションのディーリングに携わる仕事をしております。グローバル展開する事業法人や機関投
資家は為替リスクヘッジのために通貨オプションを利用することがあり、こういった投資家のニーズにこたえる
ようにオプションの売買をしております。
通貨オプションの売買という意味では直接的な関わりは薄いと考えられるかもしれません。しかしながら、私は
研究室で金融工学を専攻していたわけでないものの、数理工学という幅を持たせれば、通貨オプションをモデル
化する際のアプローチや商品特性を理解するうえで役立っていると感じることがあります。オプション現在価値
はマーケットパラメタに依存する以前に、モデルの差にも依存するわけですので。
数理工学を活かせられる分野はたくさんあると思います。ロケットサイエンティスト的な部門は当然のこと、金
融・経済においても実際いろいろあると思います。そのなかで自分の価値がどこにあるのかを探すためにも、失
敗を繰り返しながらいろんなことに挑戦すればいいと思います。研究室においても自分にしか出来ない何かをぜ
ひ探してみてください。
矢谷健一さん
現在は新入社員として,研修を受けています.具体的には,会社の考え方,仕事のやり方,社会人のマナー等の研修があります.まだ本格的に仕事は始まっていませんが,どれも仕事を行う上で大切な研修ですので,日々真剣に取り組んでいます.
私は研究室で数値解析を学んでいましたが,研究室で学んだことと,仕事の内容とは,直接的な関わりはないと思います.しかし,どのような仕事でも,数理工学で学んだ広い知識や,数理工学的な思考ができる能力は,決して無駄にはなりません.数理工学を勉強されている皆さんには,物事を論理的に考えたり,数理的に捉えたりすることのできるセンスが,無意識のうちに身についています.将来,技術に関わる・関わらないにかかわらず,この力は必ず強みになると思います.
自分の考えていることを相手に伝える能力は,研究活動でも仕事でも重要な能力です.特に私は,読み手にとって分かりやすい文章を書くこと,そして,聞き手にとって分かりやすい発表をすることの2つについて,研究活動を通して,周囲の方々から何度も指導を受けました.現在でも得意な方ではないのですが,今振り返ると,大変良い経験をさせてもらったと思います.
山崎寛幸さん
現在はインフラシステム事業部に所属し、次世代VICSの開発プロジェクトに携
わっています。私自身がそうであったように、学生の皆さんはVICSという言葉自
体、あまり聞いたことがないかと思いますが、知らないうちに実は触れたことがある
方も大勢いると思います。VICSを簡単に言うと、渋滞や交通規制などの道路交通
情報をドライバーに配信するシステムのことです(渋滞している道路がカーナビ上で
赤色に表示されるなど)。機会があれば、ぜひカーナビの画面をのぞいて「VIC
S」の4文字を探してみてください。
現在は機構設計という情報学から離れた職に携わっています(同じ職種の先輩・同期
の大多数が機械系専攻の出身者です)。ただ、要求されるものが必ずしも機械的な知
識だけとは限りません。一例ですが、特に量産品の機構設計では寸法公差をどこまで
許容するかといった、モノづくりにおけるバラつきを理論的に考慮した設計が求めら
れます。この理論的に考慮する過程で、数理工学で学んだ数理統計の知識は大いに活
用することができます。
今はリーマンショックや電気自動車の出現などをはじめとして、100年後の教科書
に掲載されるであろう出来事が次々と起こっている(また、これから起ころうとして
いる)時代です。私自身もこの1年で大きな組織変更を経験しましたが、今後は一
層、急な変化にうまく順応するといったタフさが要求されると思います。ぜひ、在校
生の皆さんには研究室での生活を通して、精神的なタフさを身につけてほしいと思い
ます。
2009年最適化数理分野(福嶋研)、修士課程修了
現在の職場: 文部科学省研究振興局情報課
また、研究室に在籍していた、様々な国からの留学生との交流・討論を通して、
文化の違いや新たなものの見方に触れることができたことも、大きな糧となってい
ます。
2006年離散数理分野、修士課程修了
現在の職場:株式会社東レシステムセンター
2007年度物理統計学分野(宗像研)、修士課程修了
現在の職場:日立製作所 システム開発研究所
2003年力学系理論分野(岩井研)、博士課程修了
現在の職場: みずほコーポレート銀行欧州資金室
2010年数理解析分野(中村・辻本研究室)、修士課程修了
現在の職場:パナソニック株式会社
2009年 制御システム論分野、修士課程修了
現在の職場: パナソニック システムネットワークス株式会社