Department of Applied Mathematics & Physics, Kyoto University

Technical Report 2009-013 (April 16, 2009)

カーネル法を用いた資産配分関数の構築
by 山下信雄,吉田雅基

pdf File


本論文では,様々な資産に投資するときに,現在の経済指標を入力すると,各資産の最適な投資配分を出力する関数を考える.これまでの資産配分に関する多くの研究では,まず対象とする資産の確率分布を推定し,次にその分布に基づいた資産配分問題を定式化し,その問題の解を最適な投資配分として与えている.そのため,個々の状況に応じて投資配分を決めるためには,その状況ごとの確率分布を推定する必要がある.しかし,十分なデータが存在しない状況では,そのデータに基づいて推定された確率分布(と投資割合)は信頼できない.そこで本論文では,状況ごとのデータに基づいて確率分布を推定してから(その状況に固定された)資産配分を求めるのではなく,すべてのデータから,状況を入力すると資産配分を出力する関数を求めることを考える.本論文では,そのような関数を資産配分関数とよぶ.最適な資産配分関数を求める問題は無限計画問題として定式化できるが,一般に無限計画問題は非常に難しい問題である.そこで,資産配分関数をある特徴ベクトルの成分の線形結合に制限することにより,無限計画問題を凸2次計画問題に変換する.さらにその問題の双対問題を導出し,カーネル法によって,最適な資産配分関数は,特徴ベクトルを陽に表さなくても,カーネル関数を用いて表すことができることを示す.現実のデータを用いて数値実験を行ったところ,提案した資産配分関数による資産運用は,従来の(固定された)資産配分による資産運用に比べて,低リスクで高い収益を得られることがわかった.